アジア太平洋(APAC)市場
- チーム体制:10名
- 開発期間:6か月
導入背景
大企業では、HR部門が戦略的な人材施策に注力する代わりに、社内規程、休暇申請、オンボーディング、福利厚生、従業員情報などに関する定型的な問い合わせへの対応に、多くの時間を費やしています。
同時に、企業が複数の地域や言語へ事業を拡大する中で、従業員からは「いつでも、すぐに必要な情報へアクセスできる」HRサポートへの期待も高まっています。
Gartnerの「2026 CHRO Priorities」によると、AIを活用したHR変革はエンタープライズHRリーダーにとって重要な戦略テーマの一つとなっており、HRオペレーティングモデルの変革によって、29%という最も高いAI生産性向上効果が期待されています。
また、Deloitteの「2026 Global Human Capital Trends」では、10人に7人のビジネスリーダーが組織のスピードとアジリティを重視していることが示されており、HR部門にもサービス提供や従業員サポートのさらなる高度化が求められています。
今回ご紹介する導入企業は、アジア太平洋地域で事業を展開する大手エネルギー・ユーティリティ企業です。
発電施設、送電ネットワーク、各地域のオフィス、フィールドオペレーションなどで働く数千名の従業員を支える同社のHR部門では、以下のような定型的な問い合わせを大量に処理していました。
- オンボーディング
- 休暇制度
- 福利厚生
- 必須コンプライアンス研修
- 社内異動
- 従業員の個人情報・人事情報
しかし、HRに関するナレッジは、従業員ハンドブック、安全規則、業務手順、HRポリシー、ナレッジベース、複数のHRシステムなどに分散していました。
そのため、HR担当者は従業員からの問い合わせに回答する前に、複数の情報源から情報を検索・確認・解釈する必要があり、多くの時間を費やしていました。
さらに、複数の国、事業部門、言語にまたがる従業員数が増加するにつれて、HRポリシーを一貫して解釈し、同じ品質で情報を提供することがますます困難になっていました。
同社は、従業員体験の向上だけでなく、機密性の高い従業員データに対するエンタープライズレベルのガバナンスを確保しながら、地理的に分散した従業員に多言語のセルフサービスを提供する必要がありました。
そこで同社はGEMに、HRナレッジを一元化し、定型的な従業員サポートを自動化するとともに、将来的なHR変革施策にも拡張できるセキュアなAI基盤を構築することを依頼しました。
GEMは、Databricks Data Intelligence Platform上にガバナンスを考慮したHR自動化ソリューションを設計・実装しました。
これにより、分散していたHRナレッジを、24時間365日、パーソナライズされた多言語の従業員サポートを提供できるインテリジェントAIアシスタントへと変革しました。
課題
導入前の課題
HR自動化ソリューションの導入前、同社ではエンタープライズHRサービスの効率性と拡張性を制限する、さまざまな業務・技術上の課題を抱えていました。
- HR部門が、休暇制度、オンボーディング、福利厚生、コンプライアンス研修、社内HR手続きなどに関する定型的な問い合わせへの対応に多くの時間を費やしていた
- HRナレッジがHRシステム、従業員ハンドブック、業務手順、安全関連文書、地域ごとのポリシー文書などに分散しており、一貫性のある最新情報を提供することが困難だった
- 発電所、フィールドオペレーション、地域オフィスなどで働く従業員が、日常的な問い合わせについてHR担当者に依存しており、営業時間外には対応が遅れるケースがあった
- 複数の国にまたがって従業員数が増加する中、ポリシーの一貫した解釈と多言語サポートの維持が困難になっていた
- 従業員サポートを拡大するためには追加のHRリソースが必要となる一方、機密性の高い従業員情報に対するガバナンスとコンプライアンスも維持する必要があった
実装時の課題
- 地理的に分散した従業員をサポートしながら、一貫した多言語の従業員体験を提供する必要があった
- AIによる回答は、承認済みのHRナレッジと最新の企業ポリシーのみに基づく必要があった
- 機密性の高いHR関連のリクエストについては、従業員のセルフサービスを妨げることなくHuman-in-the-Loopによる承認を実現する必要があった
- AIライフサイクル全体を通じて、従業員情報を保護するためのエンタープライズレベルのガバナンス、監査性、セキュリティ管理が必要だった
- 将来的なHR機能やエンタープライズAI施策にも対応できる、モジュール性の高いアーキテクチャが求められた
ソリューション

エンタープライズ向けセルフサービスとインテリジェントHRオペレーションを実現するHR自動化ソリューション
クライアントのHRオペレーティングモデルを評価したうえで、GEMはDatabricks Data Intelligence Platform上にエンタープライズ向けHR自動化ソリューションを設計・実装しました。
発電施設、フィールドオペレーション、地域オフィスなど、地理的に分散した従業員を支援するため、HRナレッジの一元化、定型的な従業員サポートの自動化、そして将来的なHR変革を支えるセキュアなAI基盤を構築しました。
一貫した回答を実現するHRナレッジの一元化
HR自動化ソリューションの基盤として、GEMは従業員ハンドブック、HRポリシー、安全・コンプライアンス関連文書、オンボーディング資料、福利厚生情報、社内ナレッジ記事などを、ガバナンスされたLakehouseへ統合しました。
これにより、単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)を構築し、従業員は勤務地、言語、所属する事業部門に関係なく、一貫したポリシーに基づく回答を受けられるようになりました。
また、HR部門は一元化されたナレッジリポジトリのみを管理すればよくなり、情報管理の負担も軽減されました。
AIを活用した従業員セルフサービス
GEMは、定型的な従業員問い合わせを自動処理できる多言語AI HRアシスタントを実装しました。
対象となる問い合わせには、以下が含まれます。
- 休暇申請・休暇制度
- オンボーディング
- 福利厚生
- コンプライアンス研修
- 従業員情報の照会
地域オフィス、事業所、フィールド拠点などで働く従業員は、HRの営業時間を待つことなく、24時間365日HRサポートへアクセスできるようになりました。
これにより、HR部門が対応していた定型的な管理業務を大幅に削減しました。
ガバナンスされたRAGによるリアルタイムなポリシー検索
HR自動化ソリューションが常に正確な情報を提供できるよう、GEMはDatabricks Vector Searchを活用したRetrieval-Augmented Generation(RAG)を実装しました。
HRポリシー、コンプライアンス要件、従業員向け文書が更新されると、AIアシスタントは最新の承認済みコンテンツを自動的に検索・取得します。
そのため、AIモデルを再学習することなく、組織全体に対して最新かつコンプライアンスに準拠した情報を提供できます。
マルチエージェントAIによるHRワークフロー自動化
単一のチャットボットに依存するのではなく、GEMは複数の専門AIエージェントによるマルチエージェントアーキテクチャを実装しました。
各AIエージェントが、それぞれ以下の業務を担当します。
- HRポリシーに関する問い合わせ
- 従業員情報の取得
- オンボーディング支援
- 休暇管理
- コンプライアンス研修案内
- ワークフロー実行
問い合わせ内容に応じて最適なエージェントへ自動的にルーティングすることで、回答精度を向上させながら、将来的に新たなHRサービスへ拡張できるアーキテクチャを実現しました。
エンタープライズガバナンスとHuman-in-the-Loop
複数の国にまたがって機密性の高い従業員情報を管理する必要があったため、ソリューション全体にエンタープライズレベルのガバナンスを組み込みました。
Unity Catalogによって、データガバナンス、ロールベースアクセス制御、データリネージ、監査機能を一元的に管理しました。
また、Human-in-the-Loopワークフローを実装し、機密性の高いHR上の意思決定については人によるレビューを必須としました。
これにより、日常的なHRサービスを自動化しながら、セキュリティと規制コンプライアンスを維持できる仕組みを実現しました。
AI品質の継続的なモニタリング
導入後もHR自動化ソリューションを継続的に最適化できるよう、GEMはMosaic AI Agent Evaluation、MLflow、自動レスポンスモニタリングを統合しました。
これにより、回答品質、推論の透明性、ユーザーフィードバックなどを継続的に評価し、AIのパフォーマンスを改善できる環境を構築しました。
同時に、エンタープライズレベルのガバナンスと運用信頼性も維持できるようにしました。
技術スタック
- データ基盤: Delta Lake、Unity Catalog(ガバナンス、データリネージ、アクセス制御)、Lakehouseによるデータ取り込み・文書解析
- 検索・Retrieval: Databricks Vector Search(Delta Lakeと自動同期)
- AIエージェント: Mosaic AI Agent Framework、Agent Bricks(Knowledge Assistantパターンを含む)
- モデル: Mosaic AI Model Serving、Foundation Model APIs、マルチプロバイダーカタログ(Claude、Llama、Gemini、GPT)、Mosaic AI Gateway
- 品質・運用: Mosaic AI Agent Evaluation(LLM-as-Judge+Human Feedback)、MLflow Tracing
- アプリケーション提供: Databricks Apps(チャットインターフェース)、ガバナンスされたツール、サードパーティアクション向けMCP
成果物
本プロジェクトでは、クライアントのエンタープライズHR環境に最適化した、本番運用可能なHR自動化ソリューションを構築しました。
主な成果物は以下の通りです。
- 地域オフィス、事業所、フィールド拠点の従業員をサポートする多言語AI HRアシスタントを構築
- HRポリシー、従業員ハンドブック、コンプライアンス文書、業務手順を統合した、ガバナンス対応のエンタープライズHRナレッジ基盤を構築
- Databricks Vector Searchを活用した本番対応のRAGアーキテクチャを実装し、常に最新の承認済みHR情報に基づく回答を実現
- 休暇申請、オンボーディング、福利厚生、コンプライアンス研修、HRポリシーに関する問い合わせをAIで安全にセルフサービス化
- エンタープライズHRシステム、従業員情報、社内ナレッジリポジトリとAIアシスタントを連携
- Unity Catalog、監査ログ、AIガードレール、Human-in-the-LoopワークフローによるエンタープライズレベルのAIガバナンスを実現
- 専門AIエージェントによるマルチエージェントオーケストレーションで定型的なHR問い合わせを自動化しながら、機密性の高い処理には人による監督を維持
- 将来的なHRサービスや他のエンタープライズAIユースケースにも対応可能な、スケーラブルなAI基盤を構築
導入効果
業務効率化
HRバックオフィス業務を80%以上削減
休暇、オンボーディング、福利厚生、HRポリシー、従業員情報などに関する大量の問い合わせを自動化することで、HRバックオフィス業務を80%以上削減しました。
オンボーディング効率を80%以上向上
地域オフィスや事業所に配属された新入社員が、HR担当者による個別対応を待つことなく、AIによるセルフサービスを通じてオンボーディング情報へアクセスできるようになりました。
その結果、オンボーディング業務の効率を80%以上向上させました。
24時間365日の多言語HRサポートを実現
発電施設、フィールドオペレーション、コーポレートオフィスなど、さまざまな場所で働く従業員に対して、24時間365日の多言語HRサポートを提供できるようになりました。
これにより、HRの営業時間に依存することなく、必要な情報へアクセスできる環境を実現しました。
HRポリシーの一貫した解釈を実現
すべてのAI回答を承認済みのHRポリシー、従業員ハンドブック、コンプライアンス文書に基づいて生成することで、地域や事業部門による情報解釈のばらつきを削減しました。
HRサービスのスケーラビリティを向上
従業員数や問い合わせ量が増加しても、HR人員を比例して増加させることなく、従業員サポートを拡張できる環境を構築しました。
従業員体験の向上
- 従業員は、HR担当者による手動対応を待つことなく、多言語AIアシスタントから即時かつパーソナライズされた回答を受けられるようになりました。
- フィールドワーカー、エンジニア、オフィス勤務者など、勤務地、言語、勤務時間に関係なく、同じ信頼性の高いHR情報へアクセスできるようになりました。
- 定型的なHR業務をより迅速かつ一貫性のある形で利用できるようになり、組織全体の従業員セルフサービス体験が向上しました。
Databricksを活用した戦略的価値
ガバナンスされたエンタープライズHRナレッジ基盤を構築
HRポリシー、従業員関連文書、コンプライアンス資料、AIエージェントを単一のDatabricks Lakehouseへ統合し、ガバナンスされたHRナレッジ基盤を構築しました。
常に最新のHR情報を提供
Databricks Vector Searchを活用することで、AIアシスタントが最新の承認済みHRポリシーを自動的に取得できるようになりました。
これにより、AIモデルを再学習することなく、常に最新のHR情報に基づくガイダンスを提供できます。
エンタープライズレベルのガバナンスとコンプライアンスを実現
Unity Catalog、AI Gateway、監査ログ、Human-in-the-Loopワークフローを活用し、機密性の高い従業員情報を安全に扱えるエンタープライズAI環境を構築しました。
スケーラブルなAI基盤を構築
HRセルフサービスにとどまらず、将来的にはITサポート、財務、調達、社内ナレッジアシスタントなど、他のエンタープライズAIユースケースへ拡張可能なAI基盤を構築しました。
DatabricksでHRアシスタントを構築しませんか?
GEMはDatabricksパートナーとして、Databricks Data Intelligence Platform上で、HRポリシー、文書、従業員データを、ガバナンスされた多言語・常時最新のHRアシスタントへ変革する支援を行っています。
👉 GEM JPN公式サイト:https://gem-corp.jp/
プロジェクト総括
HRオペレーションの高度化には、単にAIアシスタントを導入するだけでは不十分です。
地理的に分散したエンタープライズの従業員に対して安全にスケールできる、ガバナンス対応のHR自動化ソリューションを構築することが重要です。
GEMとのパートナーシップを通じて、クライアントは分散していたHRナレッジを、24時間365日、一貫性のある多言語・ポリシー準拠のサポートを提供するインテリジェントな従業員セルフサービス環境へと変革しました。
Databricks Data Intelligence Platform上に構築されたHR自動化ソリューションにより、HRバックオフィス業務を80%以上削減し、発電施設、フィールドオペレーション、地域オフィスなどに勤務する従業員のHRサービスへのアクセスを向上させるとともに、将来的なエンタープライズ自動化を支える信頼性の高いAI基盤を確立しました。
さらに、このソリューションは現在のHR課題を解決するだけでなく、エネルギー・ユーティリティ業界に求められるセキュリティ、コンプライアンス、運用レジリエンスを維持しながら、他の業務領域へガバナンスされたAI活用を拡張できるスケーラブルな基盤となっています。
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